コンテナ倉庫の良いところ、悪いところ
「週末だけ使うアウトドア用品の置き場所が欲しい」「夏の間だけスタッドレスタイヤを保管できる場所ないかな?」
こんな時、レンタル収納スペースを利用したり、自宅の敷地内に簡易的な倉庫を建てたりすることがあるでしょう。
収納と言うとレンタルのトランクルームがまず思い浮かぶかもしれませんが、大きい荷物を置きたい、自由に荷物の出し入れをしたい、安価にスペースを利用したい。こういったニーズを上手にくみ取ってくれるのがコンテナ倉庫です。
もともと貨物輸送で利用されていたこともあり、優れた耐久性で貨物を守ってくれることも大きなポイント。とは言えコンテナ倉庫を利用する前に、知っておきたいデメリットもまた存在します。
この記事では、コンテナ倉庫について解説するとともに、メリット・デメリットなどをご紹介いたします。
1.コンテナ倉庫とは
コンテナ倉庫は文字通り、コンテナを用いた倉庫を指します。
コンテナ倉庫を利用するには
①レンタル業者が管理しているコンテナ倉庫をレンタルする
②自分自身でコンテナ倉庫を購入する
この二択となります。
本項では、①のレンタルについてご紹介いたします。
①コンテナ倉庫とトランクルームの違い
コンテナ倉庫を利用しようとインターネットで検索すると、「トランクルーム」「レンタル収納スペース」などといったサイトが出てきますね。
確かにコンテナ倉庫は「レンタル倉庫」「レンタル収納スペース」といったセルフストレージの一種ですが、トランクルームとはサービスに違いがあります。
まず、一般的なトランクルームは屋内にロッカーや部屋等の専用スペースを設けていることに対し、コンテナ倉庫は屋外に設置されます。
また、コンテナは海上輸送などに用いられる貨物用コンテナをそのまま利用していることも多いため、トランクルームと比べて大型家具やタイヤなど保管にたくさんのスペースを用いるものの収納に適しています。こういった特性から、法人の在庫品や書類置き場、あるいは建設業者が工具や建材を保管するなど、業務で利用されるシーンも多々見られます。
加えて、トランクルームは一つの空間内に複数顧客の荷物がまとめて保管されていることとなりますが、コンテナ倉庫は一つのスペースは個人専用のものとなります。
とは言えこれらは明確な違いではありません。屋外コンテナを「トランクルーム」と称することもあります。
明確な違いは、トランクルームが「荷物を預かるサービス」であり、コンテナ倉庫は「収納スペースを提供するサービス」であることです。
トランクルームは顧客の荷物を預かるため、その荷物に対して盗難・破損等に責任を持ち、一定の保証を設けることが求められます。こういったことは倉庫業法で規定されているもので、トランクルームと名乗るからには「国土交通省の認定を受けた倉庫業者が、建物、設備、管理運営などの厳格な基準をクリア」しなくてはなりません。
また、トランクルームは荷物の出し入れは倉庫業者自身が行うこととなります。つまり、顧客はトランクルームの営業時間内でそのサービスを利用することに限定されます。何かあった時に補償があるので有価証券や貴金属などを預けやすい一方で、費用は高額となります。
なお、「倉庫業法」で倉庫業であれば、コンテナ倉庫であってもトランクルームとなります。
一方のコンテナ倉庫は非倉庫業となります。
そのため厳格な管理体制はトランクルームに比べると緩く、多くのケースで顧客が24時間365日いつでも好きな時に荷物の出し入れをすることが可能です。施設にもよりますが、管理人が常駐していないことがほとんどでしょう。管理にかかるコストが抑えられるため、利用料も安く済むことが最大のメリットと言えます。
しかしながらコンテナ倉庫は空間をレンタルしているだけなので、荷物に対して貸主は責任を負いません。万が一盗難・破損があったとしても、利用者責任となります。
ちなみに非倉庫業が営む、収納スペースの貸し出しを「レンタル収納スペース」と称します。
なお、コンテナ倉庫のレンタルにも所有にも特に資格は不要です。
ただ、こういったコンテナルーム・レンタル収納スペースを総称して「コンテナルーム」で括る向きもあります。そのためコンテナ倉庫の利用時には、どのようなレンタル形態なのかを事前に確認しておきましょう。
②コンテナ倉庫の概要
コンテナ倉庫は、主に海上輸送用コンテナを、用途に合わせて1部屋~6部屋に区切って使うことが主流です。貨物輸送でも多用される、20フィートコンテナがよく使われてきました。ちなみに20フィートはだいたい4.5坪ほどとなります。
中には10フィートや8フィートといった小型コンテナを用いた倉庫もあります。
それぞれのスペースには鍵がついており、その鍵を使って利用者は比較的自由に出入りすることが可能です。
また、コンテナは海上のみならず陸上輸送にも適した仕様となっており、ユニック車(クレーン付きトラック)などで持ち運ぶこととなります。そのため、車で行き来しやすい場所に設置してあることがほとんどで、大型機器類や重量のある荷物も持ち込みやすいでしょう。
ただし、屋外に設置されるため、風雨や湿度などの影響を受けやすいという側面もあります。しかしながらコンテナ倉庫によっては断熱・遮熱材がしっかり入っていたり、高い気密性で外部空気と触れないよう設計し、結露を起こしづらくしたりと言った仕様のものもラインナップされています。
③コンテナ倉庫の利用方法
トランクルームが倉庫業者であることに対し、コンテナ倉庫は非倉庫業者であることを解説いたしました。
こういった経緯から、コンテナ倉庫は不動産賃貸業者やストレージ専門業者、運送会社などが運営することとなります。また、後述しますが、初期投資が少なく管理に特別な免許がいらないことから、個人でレンタル業を営んでいることもあります。
こういった業者に直接申し込むことも可能ですが、トランクルームやレンタル収納スペースサービスが一緒になったポータルサイトなども存在します。e-トランクなどが有名ですね。
サイト内で立地や広さ、価格などを確認し、希望のコンテナ倉庫を借りる、という手順となります。
利用の際は、必ず契約内容や料金体系について事前に把握しておきましょう。
オーナーによって内容は千差万別です。使う広さによっても高くなったり安くなったりします。また、月々の利用料金以外に敷金や事務手数料などがかかることがほとんどです。
よりお得に、より自分自身の使い勝手に合ったコンテナ倉庫に出会うためには、前述したe-トランクなどを使って複数社を比較検討することもお勧めです。
2.自分自身でコンテナ倉庫を取り入れる時に知っておきたいこと
ご自身の敷地内や借りた土地に、自分自身でコンテナを購入し、倉庫として使うことも可能です。
また、前述の通りコンテナ自体の安価さ、そして輸送用に規格化されたものが量産されているがゆえの入手の容易さから、少額投資で始められるレンタル収納スペースビジネスとして着手される方もいらっしゃいます。
そんな「自分自身でコンテナ倉庫を所有」する際に気を付けなくてはいけないのが、建築基準法を遵守する、ということです。
これを守っていないコンテナ倉庫は、違法建築として行政から撤去指示や使用禁止命令が出てしまう可能性もあります。コンテナ倉庫を購入する前に、しっかりと確認しておきましょう。
※掲載する法令・条件はあくまで一例となり、実際の運用については各自治体の行政機関にお問い合わせください。
①建築確認申請が必須
建築確認とは建築基準法第6条に定められた申請行為で、「これから建てる建築物は建築基準法に適合している」ことを確認するためのものです。「地盤はしっかりしている?」「耐震性は大丈夫?」などと言ったことを審査します。
建築前に自治体に設計図を提出し、審査が完了すると建築確認済証が交付されることとなり、未確認物件は違法建築となってしまいます。
建物の全てに建築確認が必要と言うわけではありません。ただ、簡単に言うと土地に定着している建物は建築確認申請のいる建物とみなされることが多いです。
「コンテナは輸送もできるから、土地に定着していない」。かつてはこのように言われることもありましたが、現在国土交通省はコンテナ倉庫を「4号建築物」としており、ある条件下の事務所や店舗などと同等の建築物と定義しています。
確かにコンテナ倉庫は、可動できるとは言え、いつでも任意の時に移動できる、というわけではありませんね。さらに、おいそれとは動かせない状態が継続していることを鑑みて、このような定義となりました。
確認事項は自治体にもよるのですが、主要構造の腐食・腐朽の程度、基礎の有無や建築物と緊結されているかどうかなどが確認対象となります。
また、コンテナは規格が標準化されていることから多段積みにすることも珍しくありませんが、単純に積んだだけでは不十分です。コンテナがお互いきちんと接合されているかどうかが重要になってきます。
なお、コンテナハウスなどで用いられる建築用コンテナは、建築物のために設計・製造されていることから、この申請がぐっと通りやすくなります。コンテナは規格化されているため使えるスペースはそのままなのに、建築用であれば断熱・遮熱がしっかりとしたものもあります。
一方で建築用コンテナは貨物用に比べると価格が高くなるため、コスト面での利点は少なくなります。
②コンテナ倉庫を設置できない土地もある
建築物を建てる土地についても、建築基準法を守る必要があります。
まず気をつけたいのが、用途地域の制限です。
用途地域とは都市計画法の中で定められた項目で、様々な用途がある一か所に混在してしまうことを防ぐための取り決めです。住宅地、商業地、工業地などの13種類に区分されており、それぞれ建てることのできる建築物の種類・用途に制限を持ちます。
ここで「倉庫を建てても良い」とされていない土地にコンテナ倉庫を設置することはできません。
倉庫業にあたるトランクルームに比べると、コンテナ倉庫は比較的この制限が緩いのですが、それでも建てられない土地は存在します。
市街化区域内の第一種・第二種低層住宅専用地域、第一種・第二種中高層住居専用地域などがこれにあたります。
また、コンクリートで固められていない土地にもそのままコンテナ倉庫を置くことはできません。その場合は、アスファルト舗装をしたり砂利を敷いたりすることが求められます。
このケースは借りた土地だった場合、契約終了後に更地に戻さなくてはならない可能性もあり(契約による)、そうするとそこで費用が発生してしまいます。
さらに、コンテナはユニック車などで運び込む必要があるため、道路事情が悪く大型車が入れないような土地はそもそもコンテナを持ち込むことができません。
このように、コンテナ倉庫そのものだけでなく、どこの土地に置くかも重要です。
③自治体によってケースバイケース
これまでコンテナ倉庫の建築物としての遵法性について解説いたしましたが、必ず全てのコンテナ倉庫に当てはまるというわけではありません。都市計画区域外の4号建築物について「延べ床面積が10平方メートル以下」「防火地域および準防火地域外」などであれば建築確認申請は不要、といった例外も存在します。
実際に建築確認を行うのは各自治体です。
自治体によって許可基準が異なるケースもあり、統一されていない面が多々見られます。
そのため、繰り返しになりますが、コンテナ倉庫を導入する際には自治体の担当者に相談してみましょう。
3.コンテナ倉庫のメリット・デメリット
コンテナ倉庫のメリット・デメリットについて解説いたします。
①メリット
最大のメリットは、低価格で自分専用スペースを作れる、ということではないでしょうか。
前述の通り、トランクルームは管理がしっかりしている一方で、どうしても費用が高くなります。また、自分自身で倉庫を建てる場合も、耐久面で既にしっかりしているコンテナを利用することで、一から鉄骨重量造りのものを構築するよりもコストを抑えることが可能です。
また、荷物の出し入れの自由度が高いこと。そして駐車場からの運び入れが楽なことも大きなメリットです。
基本的にはコンテナはユニック車などによって運び込まれ、屋外に設置される、とお話しました。つまり、場所にもよりますが、どの時間であっても誰に気兼ねすることなく、車で乗りつけて荷物を出したり入れたりすることができる、ということを意味します。
むしろ、車が乗りつけられない場所にコンテナ倉庫を設置することは難しいでしょう。
車からの距離が近いので、大きい収納品を持ち運ぶのにも便利ですね。ちなみにトランクルームに比べて大きいものを収納できるのもまたコンテナ倉庫の魅力ですので、こういった車での利用の利便性に関わるメリットは重要です。
その他には、水回りなどはなく構造がシンプルですので設備不良が少ないこともメリットとして挙げられます。
②デメリット
一方のコンテナハウスのデメリットは、荷物の盗難・紛失などについて自己責任であり、補償なしのケースがほとんど、ということ。自分自身が借りたスペースには鍵が付けられますが、コンテナ自体をスペースで区切っていることも多く、つまりコンテナ内は第三者が自由に出入りできてしまいます。
また、屋外に設置されているため、過酷な温度環境や高い湿気、あるいは通気口から入り込んだ風雨などにさらされる可能性があり、収納物が変色・変形やカビなどで劣化してしまったというケースもないわけではありません。
とは言えこういったトラブルはコンテナルームでももちろん存在します。大切なことは、レンタル前に「断熱はどうか」「セキュリティはどうか(防犯カメラは付いているのか、治安が著しく悪い立地ではないか、など)」をしっかり把握してから契約することです。
また、ご自身でコンテナ倉庫を建てる方についてのデメリットは、イニシャルコスト・ランニングコストが意外とかかる、ということ。
「コンテナ倉庫は安い」とは言え、建築確認を通すには建築基準法にのっとった倉庫であることが重要です。基準を満たすためには、ある程度の費用をかけてしっかりしたコンテナ倉庫を建てなくてはなりません。
また、収納するものによっては、通気口をつけたり断熱材をつけたりと、さらなる費用がかかる可能性があります。
4.良いコンテナ倉庫の選び方
最後に、良いコンテナ倉庫の選び方をご紹介いたします。
①収納したい物とスペースの兼ね合いを考えよう
まず気をつけたいのがコレ!
コンテナ倉庫を借りるにせよ建てるにせよ、何か置きたい「物」がありますよね。
よくあるトラブルが、思ったより収納物が大きくて、コンテナに入らなかった、というもの。コンテナ倉庫はだいたい高さ2.6~2.7メートルほど、広さは20フィートが約4.5坪(9畳)、40フィートが約9坪(18畳)ほどとなります。広さはレンタルの場合、間仕切りによって区分けされるため、さらに小さいスペースとなる場合があります。
この空間にきちんと収納できるかどうかを考慮しましょう。
なお、大は小を兼ねる、というわけではありません。レンタルの場合はスペースが広くなればなるほど料金が高くなります。
②コンテナ倉庫の内部環境を把握しよう
コンテナは断熱・遮熱を施したり、通気口をしっかり設けたりすることで、普通の住宅のような快適な空間を実現することができます。
一方でこういった環境はコンテナのオーナーによりますし、ご自身でコンテナを購入して建てる場合は、自分自身で業者に依頼することとなります。
収納するものによっては過度な温度変化や湿気に弱い可能性があるため、「断熱はきちんと施されているか?」「湿気対策はどのようになっているか?」を事前に確認し、必要であれば上手に取り入れましょう。
なお、もし内部環境に不安がある場合は、除湿剤を置いたり、水濡れのないようブルーシート等で収納物を覆ったりといった一工夫をするのも手です。
③立地も大切
コンテナ倉庫がどこにあるかも重要です。
例えばあまりにも自宅から離れた場所のレンタルを契約してしまうと、収納物がすぐに必要になった場合、困ってしまいます。
また、ご自身でコンテナ倉庫を建てる時はもっと立地が重要になってきます。基本的には道路から車で入りやすい場所になくてはなりません。あまりにも幅が狭い道路沿いや、幹線道路沿いで一定の交通量がある中、コンテナ倉庫がある土地に入っていくのが困難な場所などは、そもそもコンテナを運び込むことができません。周辺道路に渋滞が多い場所などだと、荷物の出し入れの度に混雑に巻き込まれてしまう。そんな事態もまた避けたいですね。
さらに、夜中に利用する際、騒音で近隣住民とトラブルが発生してしまいそうな住宅地に建てる場合は注意が必要です。
④コンテナ倉庫は正しく使おう
「どんな倉庫を選ぶか」と同時に、ルールに沿った使い方をすることも良いコンテナ倉庫ライフには重要です。
例えば多くのレンタル業者は、コンテナ倉庫に以下の物品を収納することを禁止しています。
・揮発性,発火性のあるもの(ガソリンや灯油など)
・臭いの発生するもの
・あらゆる危険物や違法性のあるもの
・動植物
・生き物
・有価証券や貴金属(盗難の際に補償がないため)
危険物などはすぐに理解できますが、意外とやりがちな「好ましくない収納物」が臭いの発生するものです。
こういったものは、周囲の収納物に臭いが移ってしまう可能性があるためです。
これらの他にも、オーナーによってはローカルルールを設けている場合があります。
ルールを守って正しく使って、ご自分の大切な品を良い状態で保管してくださいね。
5.まとめ
コンテナ倉庫についてご紹介いたしました。
コンテナ倉庫は海上輸送によって広まったコンテナを用いた、低コストで耐久性の高い倉庫スタイルであること。広さ・高さがあり、大きい収納物を保管するのに適していること。収納物が温度変化や風雨にさらされる可能性もあるが、事前に確認・対策を行うことで防げることなどをご理解いただけたでしょうか。
「使っていないのに、自室で大きなスペースを取っている」そんな狭苦しい生活への一つのソリューションがコンテナ倉庫となります。ぜひ利用してみましょう!