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通関士とは?仕事内容や権限、資格の取得方法を徹底解説!

車、電子機器、高級ブランド品、牛肉など、私たちの身の回りには、外国製の輸入品が溢れていますね。また、車や半導体部品など、日本から輸出している物品が海外の多くの地域で活躍しています。

こういった輸出入、つまり貿易には、煩雑な手続きや書類が欠かせません。例えば関税の計算をしたり、それをミスのないよう書面にしたためられているか審査したり、税関に提出したり。時には税関からの処分に対し、不服を申し立てることもあります。この全てを担うとなると、一企業にとっては大変です。

そこで活躍するのが通関士です。

通関士は貿易業務唯一の国家資格であり、通関手続きを請け負う業者は原則として通関士を設置しなくてはなりません。

でも、いったい通関士はどのような仕事をしており、どんな権限を持っているのでしょうか。

この記事では、通関士について解説いたします。通関士のなりかたについてもご紹介しておりますので、通関士に興味がある方はもちろん、なんとなく貿易業務に携わりたいとお考えの方も、ぜひご一読くださいませ。

1.通関士とは?

通関士(Registered Customs Specialist)とは、主に通関手続きの際に必要な書類を用意・審査し、税関に申請することを輸出入業者に代わって行う士業です。わが国では、昭和42年に通関業法が制定されるとともに導入されました。財務省の管轄となります。

詳細をご紹介いたします。

まず関税、税関、通関について知ろう

日本国内に入ってくる輸入品には税金がかかります。これを関税(Customs Duty)と呼びます。ちなみに輸出関税を設けている国も存在しますが、日本はこれに当てはまりません。

この関税の目的は国家の税収(財政関税)であったり国内産業の保護(保護関税)であったりするのですが、これをとりっぱぐれないように、そして密輸を阻止するために設けられているのが税関です。

商社やメーカーといった輸出入を行う業者は、必ず税関に対して定められた項目を申請しなくてはなりません。

この定められた項目を通関手続きと呼びます。具体的には、「品名・貨物の種類・数量・価格」を申告すること、また、輸入品は関税を納付すること、輸出入の許可を得ること(承認)などが挙げられます。ちなみにこの手続きを怠ったり、虚偽申告を行ったりした場合は密輸に該当してしまいます。

とは言えこれって結構大変です。書類の数はさらに膨大になるし、税率の計算も自身で行わなくてはなりません。

連日多くの輸出入品が日本を出入りしています。しかも年々増加しており、2018年は輸出が81.5兆円、輸入が82.7兆円。どちらも1950年に第二次世界大戦後に日本の民間貿易が再開されて以来、過去二番目の大きさです。

そのため、税関は通関手続きを適正に・そして迅速に行うことを求めています。そして、そのためには通関書類が虚偽やミスなく適正であることが必要です。

そこで求められるのが通関業務に関するプロフェッショナル。通関手続きに特化したプロが通関手続きに関する書類作成や申告を行うことで、税関の求める迅速性や正確性を実現することができます。

そのため多くの輸出入業者は、この通関業務に関するプロフェッショナル「通関業者」に通関手続きの代理代行を依頼します。通関業者は、税関長によって許可を得て営業している、いわば国のお墨付き業者。ただ、通関手続きのみならず、保税地域での貨物の管理や運搬業務、船積みに陸揚げといった、海貨業を担うことがほとんどです。よって、全てのスタッフが通関業務の手続きに長けているわけではありません。

そこで、通関業務に関する国家資格を設け、それにパスした通関業務のプロを通関業者の営業所ごとに置くことが定められています。そのプロが通関士となります。

通関士の仕事内容・権限

通関手続きの代理には通関書類の作成も含みますが、通関士の権限でその書類に不備がないか審査することも求められます。これはミスだけでなく、ワシントン条約など各種規制品や各種法令に抵触していないかどうかのチェックも重要となってきます。

前項でも触れたように、通関士の仕事は通関業務(申告書類、関税計算書、関税の納付等)に関する手続きを、輸出入業者に代わって執り行う士業です。

適正であることを確認した後、通関士の権限のもと、記名・押印することも求められます。

万が一通関手続きにミスが発覚して税関で指摘されてしまうと(誤謬:ごびゅう)マイナス評価が付けられてしまい、最悪の場合、勤務先の通関業者が業務停止命令処分を食らってしまうことも。絶対にミスの許されない仕事です。

また、申告書が届かない場合は依頼者に催促したり(これは通関業者が行うこともありますが)、修正依頼を行ったりする必要もあります。

輸入規制品が混入していないか、申告された品目と実際の貨物が相違ないかを調べることも求められます。

さらに言うと、申告した貨物が税関で非承認となったり、なんらかの処分が下ったりした場合、税関に対して不服申し立てを行えるのも通関士しかできません。

このように、通関業務における通関士の仕事・権限はとても大きく、通関業者にとっては非常に大切な存在です。

なお、これら一連の手続きは非常に煩雑で、通関士とは言えオーバーワークが長年叫ばれてきましたが、近年では制度改革のもと、シングルウィンドウ化が進んでいます。

その一例はNACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System:税関官署、運輸業者、通関業者、倉庫業者、金融機関の相互を繋ぐ電子的情報通信システム)の導入です。

これは、輸出入される貨物や、税関を始めとした各種機関―荷主、船会社、航空会社など―をオンライン上で繋ぎ、処理できるシステムです。NACCSの導入によって輸出入品の申告、関税の納付などといった手続きをオンラインで済ますことが可能となりました。

こういった電子化によって簡略化される一方で、相次ぐ国際テロや麻薬・銃器・ワシントン条約に抵触する動植物といった輸入規制・禁止品に対する厳格化も進んでいます。

いずれにせよ、通関士の正確な仕事が大切であることに変わりはありません。

通関士が置かれるようになった歴史的背景

日本は第二次世界大戦後、国家による管理貿易が行われていました。

しかしながらじょじょに他国との国交や経済活動が活発化していくにつれて輸出入貨物の量が増加し、国だけでは管理しきれなくなります。

そこで1966年、申告納税方式が導入され、翌1967年、これに伴い通関手続きや関税の申告のための通関業法が制定されました。

この通関業法では、税関長の許可を得た通関業者や今回ご紹介する通関士のための制度にも言及されるようになり、今日の通関業の礎が確立しました。

ちなみに通関業者含む海貨に関連する業者を「乙仲(おつなか)」と呼ぶことがありますが、これは戦前の海運組合法の名残であり、正式な法律用語ではありません。

2.通関士になるには?

貿易に欠かせない通関士。いったいどのような手続きを踏んでなることができるのでしょうか。

通関士になるためには、国家試験である通関士試験に合格しなくてはなりません。

この合格者は通関業者に勤務することとなりますが、その業者が「当人を通関業務に従事させる」ことを税関に申請・税関長の確認を得てから通関士と名乗ることができます。

通関士試験に年齢や学歴・職歴は関係ありません。しかしながら5年以上通関業務に携わっていれば、所定科目の免除を受けることも可能です。そのため通関業者に就職してから通関士を

取得するケースも珍しくありません。ちなみに通関士の有資格者は、給与に資格手当が付けられることが多いようです。

とは言え、この試験は結構難関。合格率は年度によっても異なりますが、だいたい約10%と言われています。受験者数は例年1万人ほどいるにもかかわらず、約1000人しか受かっていません。

試験科目は「通関業法」「関税法、関税定率法その他関税に関する法律及び外国為替及び外国貿易法」「通関書類の作成要領その他通関手続きの実務」の3科目ですが、範囲は膨大となるためしっかりと勉強しなくてはなりません。また、国内外のあらゆる貨物を取り扱うという通関士の特性から、製品知識についても問われます。

ちなみに海外製品とのやり取りが多い通関士ですが、意外なことに試験科目に語学はありません。ただ、実際の業務で取り扱う製品や手続き書類は英語であるケースも多いため、合格後にある程度の英語での貿易用語はマスターする必要があります。

合格後は運送会社や海運会社など、前述の通り通関業者に就職することとなります。

日本の貿易の港は空路と回路があるため、通関士はそのどちらもが管轄領域となりますが、実際に輸出入品のほとんどが海上輸送を用いられています。そのため就職のしやすさで言えば主要港湾の通関業者でしょう。

通関業者でなくとも、資格や知識を生かして船会社や航空会社に就職する方もいらっしゃいます。

なお、現在日本国内の通関士数は8,216人、通関士以外の通関業務従業者数は7,755人となっています(2020年4月1日現在、税関の公式ホームページより)。

3.まとめ

通関士についてご紹介いたしました。

通関士とは通関業者の中でも、手続きの際に必要な書類を荷主に代わって用意・審査できること。また、税関の処分に納得がいかない場合、不服申し立てができること。通関業者は営業所に通関士を設置しなくてはならないこと。とは言え通関士試験の合格率は決して高くはなく、なるのも大変・なってからもミスが許されないなど、非常に責任の重い仕事であることをご理解いただけたでしょうか。

身近ではないものの、日本の貿易に決して欠かせない立役者が通関士である、ということをお伝えできていれば幸いです。

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